未経験者でデータサイエンティストを目指す人に知ってほしい分析キャリアの話

分析キャリア
  • データサイエンティストになりたいけど未経験からどうやって参入したらよいか分からない
  • とりあえずpythonやRを書けるようになれば何とかなるのではと思っている
  • データサイエンティスト募集の求人を出してる企業に入社したらみんなデータサイエンティストになれると思っている

そんな気持ちの人向けに、まずは「業界・ライバル・自分のポジション」を踏まえて、どんな分析キャリアが考えられるのか、ほぼ何のバックグラウンドもない完全未経験からデータサイエンティストを目指せるのか、どんなルートで業界参入していくのが良いのか?を考えていきたいと思います。

目指すキャリアによっては厳しい現実にも直面しますが、それでも業界に進みたいかを検討すると、目的意識がしっかりした就職転職活動ができるのではないかと思います。

私も適切なバックグラウンドがない人間ですが、結果的に業界参入ルートとタイミングが合い12年程分析職をしています。1採用者の視点から、未経験参入のキャリアについて考えてみます。

業界未経験でデータサイエンティストを目指す2種類の人

ざっくり2種類に分けると、


タイプA時間をかけてデータサイエンスを学んできた企業を選ぶ側の優秀な学生=「スキル先行」 タイプBバックグラウンドがあるわけではないが時流に乗ってデータサイエンティストを目指したい人=「就職意欲先行」


Aのような、付け焼き刃ではなく数理統計を学びながら趣味でkaggleのようなコンペで実績残したり、積極的に勉強会やセミナー参加して登壇者らとデータサイエンスのコミュニケーションを取ったりしている優等生は、そのままデータサイエンスを使って自分のやりたいことができるフィールドに進んでいけばよいと思います。

一方でBのような、完全未経験または学習しはじめで純粋な分析興味より「職につく」ことが先行している人たちは立ち位置を理解して取り急ぎ目指すべきゴールそこへたどり着くルートが優等生組とは異なることを理解する必要があります。今回こちらのタイプBに焦点を当てていきます。

Bからの挑戦は狭き門だから諦めたほうが良いというつもりは全くなく、業界・ライバル・自分のポジションをしっかり理解した上でどういうキャリアを目指すのか、取れる戦略を理解した上で目指したいポジションに向かって地道にステップアップしていけばいいし、挑戦して世の中にデータ活用人材が増えていくのは好ましいことだと思います。

ではタイプBの人が目指しやすいポジションにはどんなものがあるでしょうか?

未経験で目指しやすいデータ分析ポジションとは?

曖昧に思い描かれがちなオールマイティにスペシャリストなデータサイエンティスト像のもっと手前に社会で活躍できるデータ利活用ポジションは存在しますし、今後そのポジションは分岐増加していくと思います。

たとえばデータアナリスト・データ分析コンサルタント・ビジネストランスレーター・分析特化型セールスエンジニアなどなど。

「データ分析が好き」「データ分析がしたい」という気持ちが先にあるならば、そういったポジションとして働くことにモチベーションを感じられるのではないでしょうか?逆にそう感じられない人がデータサイエンティストを目指しても関係者含め不幸な結果が待っていると思います。

データが好き、分析が好きだから業界に潜り込んで関連職に就く。そこでスキル実績を積んでいった結果、データサイエンティストを目指す、という順序ならありだと思います。

ただ、仕事を通してデータサイエンスを学んで試してという楽しいことをしていると、データサイエンティストという肩書自体へのこだわりは消えていく人が多いように思います。活躍できるようになればやりがいも給料も満たせてくるので当然といえば当然でしょうか。

上記で、例としてデータアナリスト・データ分析コンサルタント・ビジネストランスレーター・分析特化型セールスエンジニアを挙げましたが、いずれにしても生データをいじくり回して集計・分析する意味でのデータアナリスト(分析官でも集計担当でも呼ばれ方は何でも良いですが)を入口とするのが良いです。例えばデータをほとんど触ったことのないコンサルタントが顧客提案をするとどうなるか想像に難くないですね。

ちなみに上記はいずれも、データサイエンティスト協会が定義している「データサイエンティストに求められる3つのスキルセット」のうち「ビジネス力」を強みとしたスキルセットを養成していくことになると思います。(タイプBの人の前提として必然的にそこで勝負していくことになるはずです。)

一方でタイプBの人が機械学習エンジニアをターゲットにするのは相当茨の道かなと思います。
AutoMLの台頭もありモデリングの精度で勝負するのは辛い時代に入っていますよね。「pythonできます、scikit-learnでモデル組めます」のバリューは下がっていく一方なので、それを使って何ができるか?データのビジネス活用力を鍛えていくのがポイントになるかなと思います。

話を戻して、入口としてデータアナリストとしてまずは自力をつけることをおすすめしてきました。
その前後に焦点を当ててみたいと思います。

未経験からアナリストの仕事をはじめるにはどんな環境がベスト?

分析力の地力をつけるにはざっくり以下のような環境があると、データ理解・様々な集計アイディアの実践といったスキルUP、モチベーションの維持、分析業務のsustainabilityの観点から望ましいです。

  • 生データを触れる(自由にSQLできる)状態にある
  • 業務時間のほとんどを分析に当てられる(専門職)
  • 依頼主のデータ活用リテラシーと発言力が強い
  • データについてインフラ部署に気軽に聞ける

これをある程度満たせれば後は本人の努力次第で分析力を磨いていけるかなと思います。

個人的に、正社員で分析っぽいこともできそうなSEとして入社するよりは、派遣でもアルバイトでもピンポイントでデータいじりできる現場を経験することが中長期でメリットがあると思います。採用者視点で考えるとSEからの応募は多いんですが息を吸うように分析SQL書いてますっていう人はなかなかいなく、分析経験者をアピールできるのは強みになると思います。

そんなことを念頭に置きつつ、分析を仕事にする上で「事業会社で働くのか」「コンサル会社で働くのか」という軸もあります。両方働いてみるとそれぞれ学べる事があって良いと思いますが、おすすめとしてはまずは事業会社で、1つのデータセットとみっちり向かい合う経験が重要と考えます。

データ定義を十分に理解した上で、あれこれ工夫してデータを出したり、こんなKPIを追ってみたらどうか?といった試行錯誤を繰り返していく中で自然と自分の中に分析の軸ができてくると思います。

このように落ちついて分析に従事できる環境があれば、事業会社で分析力をつけるのはおすすめできるのですが、いかんせん当たり外れの分散が大きい点はリスクがありますね。先程の4つの環境要件について入社前に把握したいところですがどうしても入ってみないと分からない部分は出てくるので。

次に、何らか分析職を得た後にどんな目標を持つべきか?について考えていきます。

分析キャリアスタートからのステップ

ここまで、未経験タイプBの人がいきなり「データサイエンティストになる」ことを目標にするのはおすすめできないお話をしてきました。

まずはデータをいじれる分析職としてスタートし、そのキャリアを継続できる土台を作る事が肝心です。そのための最初の目標として、まずは関係者の信頼を得ることが重要です。

1st STEP

抽象的ですが、「自走してどうにかこうにか納期内にアウトプットを出してくれる信頼」を得ることが重要かと思います。上司からこの信頼を得るのに重要なのは「分析スキルや統計知識よりもコミュニケーション力やタスク管理能力」といった超基本的なビジネススキルがキーになっていると感じます。未経験スタートではこの点で初期にネガティブな評価を受けてしまうことも多々あり、面接時に見られるポイントにもなります。

2nd STEP

初期の信頼が得られてやっとキャリアスタートかなと思いますが、その後は以下の状態にあるか、少なくとも近づいていっているのであれば、分析職の継続はできるかと思います。とりあえず蹴落とされないという意味で安定期に入ったと言えるでしょう。

  • ビジネスマンとして収入を安定的に得られる状態。収入を増やしていける状態。(=金銭面
  • 主観でいいので活躍できている状態(=精神面
  • 転職に困らない程度のデータ分析職にありつける力を持った状態(=標準スキル面

3rd STEP

これから先は選択肢の幅も広がってきます。

仮に事業会社の自社サービス改善のためのデータアナリストとしてスタートしたとしましょう。
上記安定期に入った上で、どこかで自身の成長速度が減速してきたと感じるようになるかもしれません。そのときはコンサル会社も含めた別の環境を検討しても良い時期だと思います。

上記はあくまで例ですが、ポイントとしてはステップを踏んで選択肢を広げていくのが重要です。

次のステップとして、「ビジネス課題・分析テーマ・分析手法など知識の幅を広げる」ことを目指しましょう。
ここまでは、1つのデータセットを深く分析することで地力をつけることをおすすめしてきました。

その上で、いろいろなデータセットに触れたり、いろいろな分析手法に触れると、吸収の深さ・スピードが断然違います。自分の中にベースとなる分析の考え方・軸ができているからです。
なので、事業会社からコンサルのキャリアは流れが非常に良いと思います。

さて、ビジネスアナリストとして成長が感じられる楽しい時期なのですが、アナリストを悩ませる別の問題も発生しはじめます。マネージメントです。

マネージメント業務との折り合いのつけ方

データ分析職として入社した人がマネージメントを純粋にやりたいというケースはほとんど見かけないです。

ただし企業としては分析のマネージメントができる人材は重宝しますので、仕事のやりがいを取るか収入を取るかという中で折り合いをつけていくことになってくるかと思います。(ここではマネージメント適正については無視します)

卓越した分析力でマネージメント層よりも高収入ということももちろんありますが、例によってタイプB未経験者を対象に考えた場合基本的にマネージメントキャリアの方が高収入にありつける可能性は高くなると思います。

やりがいをどう捉えるかを改めて考える必要があるかもしれません。あくまで自分で手を動かしたいのか?人を使ってアイディアを試すサイクルを早める方が良いのか?
またはマネージャーとして人に教えることで自分自身の理解が深まるのでアナリストとしてのスキルアップにつながるという考え方もあります。

許容できるやりがい・収入・適正などから職務を選択していくことになるかと思います。
例えば、リードアナリスト・コンサルタント・マネージャー。

この業界一生学習は続くので、こういった職務を確保しながら、改めて「データサイエンティストに求められる3つのスキルセット」を磨いていく、というスタンスが一般的かもしれません。

まとめ

ここまで、駆け出しのアナリストから、少なくとも分析関連職として活躍していける人材へのアプローチを私の主観で一例としてまとめてみました。

繰り返しになりますが、データ分析職に就きたい人は、未経験からでも短期間でデータサイエンティストになって高給取りに、というような煽りに惑わされずに、まずは自分自身が分析が好きか自問自答して、答えがYESなら形はどうあれデータをいじれる環境に見を置くと遠回りのようでも地力がつくと思います。

高いお金払ってスクールに通っただけの人より、自分の頭で工夫してデータをいじる体験の方が得られるものは断然多いんですよね。

その上で、人生のかなりの時間をデータ分析に対する学習に捧げるのは本望だ、と思える人は忍耐強くステップアップしていきながら高みを目指せば良いと思います。

いやいや、別にデータサイエンティストは目指さないんだけど今後需要が増えてくる周辺職種を見据えているんだという人もそれはそれでありだと思いますし、今回触れたデータアナリストからのステップアップは参考にして頂けるのではないかと思います。

流行り言葉に踊らされずに、地に足つけて分析を楽しんでいきたいものですね。
AIバブルが終わって、ちゃんと価値のある分析がシビアに求められる時代になるので、普遍的なスキルを身に着けていくことの重要性を私自身感じています。

とにかくみんな機械学習からやり始めようとする傾向がありますが、そんな人達を横目に古典統計からしっかり活用できるように学んでいくと長い目で見て差が出てくるのではないかなと。

これから分析業界に参入しようと思ってるけど、未経験でどういう戦い方をしたら良いのか分からない、といった人に少しでも参考にして頂けたら幸いです。

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