新米データアナリストがデータ分析業界で生き残るためのスキルの優先順位

身につけるべきスキル

データ分析の現場でPMから採用まで担当している立場から、データ分析職として生き残れる人はどんなスキルを評価されているのか?優先的にテコ入れすべきスキルは何か?を実体験をもとにまとめています。

趣味や個人的な研究で分析をするのと、一民間企業で仕事として分析をするのでは、身につけるべきスキルの優先順位に違いがあります。仕事として分析で身を立てるには「できる」人材として信頼を得る必要があり、「手がかかる」と印象付けられると、およそ分析らしくない仕事しか任されなかったりとやりがいや成長の機会が失われがちだし、その評価を覆すのにけっこうな労力が必要になります。

かなり抽象的に「できる」or「手がかかる」という表現をしましたが、その違いを分けるスキルは何でしょうか?そしてどういう基準でスキルの優先順位を考えるべきでしょうか?

想定対象者

まず、想定するのはゼロからデータ分析職に就く、または多少の経験がある程度のケースです。
そして分析官が1人2人といった小規模ではなく、事業会社であれば分析チームが存在しているケース、または分析コンサル会社のケースで、その環境でアナリストとして生き残り這い上がっていくシナリオを想定します。

必要とされる分析スキルを逆算する

「できる」「手がかかる」という感情を抱くのは誰でしょうか?まず上司ですね。(マネージャー・ディレクター・リーダー・メンター何でもいいですがここでは上司に統一します)

分析に限らずですが生き残りライバルと差別化していくには、結果的にでも上司に評価をされないといけません(当たり前)。ただ、活躍しにくいタイプの人ほどそのことを明確に意識できていないです。

個人的にご機嫌取りは好きではないですが、生き残りをかけた新米アナリストが何が何でもこの業界で成功するために最善の行動を取るという前提で考えていきたいと思います。(そう思うとご機嫌取りであっても尊い行為のように感じてきますねw)

では逆算して上司に評価されやすい分析スキルとはどのようなものでしょうか?

上司がうれしいのは黙ってても分析プロジェクトが進む状態

より具体化していきます。上司が困るのはどんなときか?
一言で表すならメンバーに対して「手がかかる」状態。ではどんなときに手がかかることになるか?

・プロジェクトが炎上に近づいていってるとき

(炎上のイメージ…納期遅れや低品質アウトプットや依頼主とのコミュニケーション不全など)
まともな上司なら炎上する前にフォローに入ります。そのフォローの程度がそのまま「手のかかり具合」になってきます。

では、逆に上司が嬉しいのはどんな状態か?

・黙ってても仕事が進む状態

複数プロジェクトをこなしている人ほど、できるだけ脳内からそのプロジェクトのことを切り離していられることを望むかと思います。
これが「手がかからない」つまり負担が少ないということです。

手のかかる状態を言語化する

手がかかる状態の具体例を挙げると…

・会話のキャッチボールが無駄に往復する
・タスクの管理漏れが発生し上司がタスクに気を払う必要がある
・レポートでもチャットでも口頭でも情報が整理されていない
・進捗報告のレスポンスが悪い
・分析設計ができない。課題に解を出すアプローチになっていない。
・適切な分析手法を選べない
・SQLによるデータ抽出のミス・作業遅延
・レポートが人が読めるレベルになっていない(ストーリーラインができていない)
・分析結果の解釈が筋が通っていない
・分析結果からのネクストアプローチが弱い(深堀り方針やレポートの落とし所)

こんなところでしょうか。
これを「データサイエンティストに求められる3つのスキルセット」に沿って抽象化すると…

  1. ビジネス力(コミュニケーション能力・顧客調整能力・タスク管理能力・情報編集能力)
  2. データサイエンス力(課題の分析設計への落とし込み・分析結果の解釈)
  3. データエンジニアリング力(SQLによるデータ抽出ハンドリング能力)

上司の立場からして、どのスキルが低いと一番困るでしょうか?

上司のカバーしたい範囲、したくない範囲を知る

私個人の考えは、「人材視点」では、「ビジネス力」を重視します。短期で伸ばしにくいスキルも多いためここは基礎として一定のレベル以上であってほしく、採用時にも重視しています。

ただし、「プロジェクト視点」では「データエンジニアリング力」を最重要視します。上司は細かな集計レベルのコードチェックをしたくない、もしくはする時間を確保できないのが多くの現場の現状ではないでしょうか。

私自身もさすがにそこは任せたい気持ちが強いです。レポートレビューはするけど、集計はもうアナリストを信頼するしかない。そのためデータ抽出でミスが多発したり作業遅延が発生するアナリストの評価は厳しくなります。そんなわけで、「データエンジニアリング力」は上司がカバーするのが物理的に難しいため、最重要としています。

一方で、人材視点では重視したい「ビジネス力」ですが、プロジェクト視点では「データエンジニアリング力」の次点となります。理由は、上司がカバーできてしまうからです。本音はアナリストで完結してほしいところですが、顧客コミュニケーションやタスク進行管理、レポーティングなど最悪巻き取ることができてしまいます。

最後に「データサイエンス力」。課題の分析設計への落とし込み、分析手法選択、分析結果解釈など、最も楽しい工程です。それゆえに上司もポジティブにカバーしたがります。有意義な工数の使い方と感じやすいです。

上司が「ここは1人で完結してほしい」という部分を最優先

繰り返しますが、「データエンジニアリング力」特に分析レポーティングにおける「データ抽出」の部分は上司が「ここは1人で完結してほしい」と思うスキルの代表格です。

なので、初期段階でSQLの学習は人一倍時間をかけて、人一倍頭を使って集計の工夫やいろいろなチャレンジをしてみることをおすすめします。この工程の学習(社員教育)に時間をかけられる企業はあまりないと思いますが、だからこそ初期投資と思って時間外でも徹底的に体に覚え込ませることが差別化・強みにつながると思います。

SQLによるデータ抽出に関しては、学習の終わりがあるわけでなく、マニアックな集計をSQLで実現しようと思えばいくらでも事例があり途方にくれてしまいます。アナリストなら多くの人が持っている「ビッグデータ分析・活用のためのSQLレシピ」しかり。

ただ、マニアックなSQLは使うときに調べればよいので、基本をもとに自分がやりたい集計を実現できる程度の応用力を身に着けていけばよいと思います。

1つのデータセットでも、分析者ならいろんなデータが知りたくなるはずです。こんな軸で見てみたらどうか?こういう指標を作ってみたら実際に観測できていない数値を擬似的に表現できるのではないか?といったアイデアベースでSQLという武器を使って自由にいじる経験が中長期的なデータ分析官としての土台を作ってくれると思います。それでいて初期段階での上司の信頼にも大きく影響するのだから注力したいところです。

余談ですが機械学習の勉強なんてSQL遊び尽くしてからでも全然遅くないのにな、と個人的には思ってしまいます。

分析スキルの優先順位:まとめ

結論、上司の手を煩わせずにプロジェクトを進行させるには「データエンジニアリング力」(SQLによるデータ抽出ハンドリング能力)、次点で「ビジネス力」(コミュニケーション能力・顧客調整能力・タスク管理能力・情報編集能力)、最後に「データサイエンス力」(課題の分析設計への落とし込み・分析結果の解釈)という優先順位を推奨します。

不思議なことにデータサイエンティスト志望で真っ先に機械学習に手をつける人が多い一方で、「データエンジニアリング力」「ビジネス力」が疎かな人は、プロジェクトマネジャーの求めるスキル優先度とは完全にミスマッチなんですね。

もちろんポテンシャルのアピールとして統計学・機械学習・マーケティングサイエンスなど学ぶのは必要なことだと思いますが、今回ターゲットのように極平凡なスタートを切った未経験アナリストが生き残り這い上がっていくためには、という文脈で企業視点、上司視点、プロジェクト視点で考えると優先順位が変わってくる、という話ですね。

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